鎌倉沢の鉱泉宿(昭和)


『伊那の古城』篠田徳登より  昭和39〜44年執筆


 古い歴史を包んだ鹿垣部落を一まわりして鎌倉沢に下りると、そこに鉱泉宿があった。土管をつみ上げたエントツから白い薪の煙が上って、湯の香りがかすかにプンとする。[p49]

 鉱泉宿も家は昔のままだが、その主人は、今(昭和39〜44年頃)中曽根に移って、人に貸してあり、使わなくなった田渋は赤く海綿の様に田の溝を埋めていた。多分鉄さび系のものだろうが、水の面には光る油の様なものが浮いていた。[p89/50]